家づくりの知恵と工夫

飯場荒らしの常習

家の両親が若かりし頃、我々親子は建設現場の飯場に住んでいたのだ。そこに居るのは地方出の若いあんちゃんから、行き場を失った身元不明者ばかりでとても治安のいい住まいとは言えなかったが当時、田舎から都会に上って一旗上げようとする者共にとってそれはなんの苦にもならなかったばかりか、あの頃のパワーに満ちた時代が一番良かったのではないかと懐かしく思い出されるらしい。
そんな雑多で貧困に満ちた生活環境で生きていると、先ず犯罪者も数多く紛れ込んでくるらしく、ある晩いつものように皆で談話室に集まって安酒を呑んでいると仲間の一人が「最近玄関からオレの靴を間違って履いて行くやつが居て困る」と言い出した。すると「お前もか?実は私もだ。ここの所3足なくなって今日も買ってきたばかりだ。もう次になくなったら仕事に行けない」という奴。「私のサンダルなんか誰も間違いようがないのに一昨日から見当たらない」等々続々と被害報告が。
これはもしや?と一同静まりかえったその時。ゴソゴソ隣室から音がする。ン?今日は自分たち以外誰も居ないはずなのに?更に耳を澄ますと、ギギーっとドアが開きミシミシと静かに廊下を歩いて足音が近づいて来る。まさにこの部屋のドアの前まで来た瞬間、バーン!とドアを蹴破る音。続いてダダダダ〜!階段を転げ落ちる音。ドアを蹴破ったのは血の気の多かったウチの親父。一斉に階段を駆け下りるみんな。
階段下には大きな風呂敷を背負った初老の男がのびていてその周りに散乱するおびただしい数の履物。すぐ警察官に来てもらう。
その男、飯場荒らしの常習でその時も既に数件廻って稼ぎ最後にここに寄ったらしい。
当時はそういった類の空き巣には事欠かなかったのだとか。

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